材料の高耐久・長寿命化が進み、超長期的に性能を維持できる
建造物やシステムは、人間に安心と安全を与えるか?
壊れない、長く使えるという性質は、長らく「良い」製品の代名詞として語られてきました。そうした“長所”が究極に進化を遂げ、絶対に壊れない、もしくはほとんど劣化しない材料や製品がつくられ、それらを使用した社会インフラや大規模システムが建造・構築されるようになったら……それは理想的な未来のように思えますが、果たしてそうなのでしょうか。
絶対に壊れない材料を利用してつくられたものは、メンテナンスや改良、更新をする際に、(部品や資材が丈夫・頑強であるがゆえに)、煩雑な手間と大きな労力がかかるかもしれません。その作業は困難を極め、自然や生態系に影響を与えるかもしれません。
そもそもほとんど劣化しない素材は、原料の調達や価値を生み出す工程に大きな負担がかかることでしょう。コストは上昇し、大規模なシステムに適用することは難しいかもしれません。また、国際社会では限られた資源を奪い合うことにもなりかねません。
超長期的に性能を維持する社会インフラやシステムに支えられる未来は、利点やメリットに満ち満ちている、というわけではなさそうです。
『FUSE』は、壊れないもの、長持ちするものが良いという常識から離れ、広い視野から、未来の「人間とシステム」の可能性を思い描きました。
壊れないようにすることを唯一の指標とするのではなく、壊れる前に計画的なメンテナンスをする、壊れても修復するといった回復力や循環性を高めることはできないでしょうか。
寿命や耐久性を伸ばすことだけを良しとするのではなく、状況に対して合理的かつ臨機応変に対応する仕組みを、もっと評価することはできないでしょうか。
機能や性能を半永久的に継続・維持できるシステムと、状況や環境の変化に、柔軟に応じて代謝再生できるシステム。
あなたはどちらに支えられて暮らしたいですか?
現在の価値観の延伸によるビジョン:維持継続できるシステム
- 技術が、超長期に渡り性能を維持できるシステムを生み出す
- 常に新しい技術、最先端の知識を利用する
- 寿命や耐久性を伸ばす
- 合理化、単純化し、個別最適化を図る
工学研究科が思い描く別のビジョン:代謝再生できるシステム
- 技術が、状況に合わせて常に代謝・再生できるシステムを生み出す
- 地元のリソースやその土地の特性、古くからある叡智を利用する
- 柔軟性や拡張性を伸ばす
- 複雑さを受け入れ、全体満足化を図る
望ましい方向性を考えるために考慮すべきバランス
- 壊れない、安全な ーーーーー 回復力のある
- 中央管理 ーーーーー 分散管理
- 専門性・合理性 ーーーーー 学際性・包摂性
関連する工学研究科の研究分野の例
- 物流・人流・移動・輸送
- 土木インフラ
- 住宅・建築
- 都市・地域・まちづくり
- システム保全・マネジメント
- 農林水産・気候・自然環境