便利さ・快適性を追い求め続けたその先に、
最上の満足と豊かさが待っているのか?
将来、高度に発展した技術が、自分の身体の状態や必要性、その時々の気持ちを察知してくれ、すぐさま最高の体験や最適なサポートを提供してくれる………それはとても理想的な未来のように思えますが、果たしてそうでしょうか。
機会やリソースが限られる中で、誰かが「最高の体験」を享受している時、他の誰かは我慢や妥協を強いられるかもしれません。
最高の体験を経験してしまうと、それに接することのできない時間は、ストレスを感じたり憂鬱(ゆううつ)な気持ちになったりするかもしれません。
また、自分にとって極上の体験が、他の人にとっても心地よいものとは限りません。異なる極上を求める人たちが、うまく協調することはできるでしょうか。
『FUSE』では、少し視点を変えて、それとは異なる「人間と人間」の可能性を思い描きました。
技術を個人個人に合わせるのではなく、人と人とをつなぎ、より多くの人が豊かさや快適性を共有できるような方向に進んだらどうでしょうか。
技術によって自分だけの利益や欲望を満足させるのではなく、お互いの困り事やニーズを補い合うような関係性は築けないでしょうか。
“個”を優先させて、技術という社会資源を奪い合う未来と、人と人がゆるやかにつながり、技術の利便性と豊かさを共有する未来。
あなたはどちらの未来に生きたいですか?
現在の価値観の延伸によるビジョン:自己中心化する人間
- 技術が、人間1人1人それぞれのニーズを高速に、高精度に、最適に処理する
- 利用者個人の満足、自助的な体験が重視される
- 個人個人の多様なニーズを個別に満たす
- 最適化された最高の体験を享受するため、最高でない体験(待ちや競争、資源利用)も我慢しなければならない
工学研究科が思い描く別のビジョン:自己組織化する人間
- 技術が、自分と合った他者との協業や、シナジーが生まれる関係性、コミュニティを生み出す
- コミュニティ全体の繁栄、共助的な体験が重視される
- 個人個人の多様なニーズの需給を補い、埋め合う
- 体験の構成要素全体が一貫して満足できる体験を一緒に作る
望ましい方向性を考えるために考慮すべきバランス
- 便利な、快適な ーーーーー 意味のある、安心できる
- 個人の体験の品質向上 ーーーーー 個人と個人の豊かな関係性構築
- 離散的な瞬間の最適化 ーーーーー 連続的な体験の満足化
関連する工学研究科の研究分野の例
- 生体、医療、ヘルスケア
- 生活・社会環境
- 組織・コミュニティ・ネットワーク